London Evening Advertiser
- 母親、命がけで炎から赤ん坊を救う
- 「精神異常は遺伝しない」と教師たちに説く
- 空中文字の飛行士、古いエンジンオイルを使う
この読解は、1926年10月29日付ロンドン・イブニング・アドバタイザー紙から3本の記事を取り上げた。地元の記事は、ガン通り58番地のパーシー・シェリット夫人が燃える木造コテージに駆け戻り、眠っていた生後2か月の娘を運び出したと伝えた。記事によれば、その直後に赤ん坊のベッドに火が燃え移り、火元は欠陥のある煙突とみられ、夫人はショックで衰弱していた。講演の記事は、州立大学の講演者が教師たちに、精神異常も気質も遺伝せず、子孫が受け継ぐのは負担に弱い神経系だけであり、自分の身に気をつければ発病は防げると語ったと報じた。ニューヨーク発の記事は、スカイライターが古いクランクケースオイルを熱い排気管に垂らして煙を作っており、ガレージがその廃油を暖房に燃やし始めたという石油会社社長の話を伝えた。
この読解は、一部しか判読できない紙面から3本の抜粋を扱う。OCRはひどく崩れていたため、本文は紙面の画像から書き起こしてある。画像タイルの境目で一部の段の端が切れており、紙面の右下は破れている。講演記事は文の途中から始まるため、講演者の名前は失われ、「州立大学」という語だけが残っている。空中文字の記事の発言者の名は書き起こしではマクターナハンとなっているが、書き起こしの注記は行をまたいで分かれた名をマクファーナハンとしている。解説はオンタリオ州ロンドンの木造コテージの煙突に関する防火規則を扱っていない。裏付けとなる資料が手元になかったためである。
翻訳
母親、命がけで炎から赤ん坊を救う
住まいの中をなめ尽くす炎で大けがをする危険を冒して、ガン通り58番地のパーシー・シェリット夫人は今朝、生後2か月の娘を死から救った。11時を少し過ぎたころ、シェリット家の内部は火事で焼け落ちた。赤ん坊にけがはなかったが、シェリット夫人はひどいショックを受け、今は夫の両親の家に身を寄せている。平屋の木造コテージである家の内部はひどく損傷し、家具の大半が焼失した。火事の原因は欠陥のある煙突とみられている。シェリット夫人は台所のストーブに火を入れた。そのあと、洗ったばかりの衣類を干すために庭に出た。家に戻ろうと振り返ると、窓や戸口から煙が噴き出しているのが見えた。夫人が家にたどり着いたとき、壁はほぼ一面炎に包まれていた。赤ん坊は寝室でぐっすり眠っていた。シェリット夫人はとっさに、自分の身の安全も顧みず燃える家に駆け込み、赤ん坊を寝室から連れ出した。そのほんの一瞬後、赤ん坊が眠っていたベッドに火が燃え移った。
「精神異常は遺伝しない」と教師たちに説く
[?]州立大学の……は、聴衆の多くに衝撃を与えたに違いない理論を唱えた。それほどまでに、その理論は一般の通念と食い違っていた。彼はとりわけ、子どもは気質を受け継がないこと、精神異常は遺伝しないこと、そして先祖がそろって精神病院の収容者でありそこで死んだとしても誰も心配する必要はないことを、自らの信念として述べた。そうした人々の子孫が受け継ぐのは、負担がかかると破綻しやすい神経系だけであり、本人が自分の身にきちんと気をつけていれば精神に異常をきたす理由はまったくない、と彼は主張した。
空中文字の飛行士、古いエンジンオイルを使う
ニューヨーク、10月29日――「飛行機で空に文字を描くスカイライターたちは、古い自動車のクランクケースオイルをインク代わりに使っている。真っ赤に焼けた排気管にこれを少しずつ垂らして、濃い白煙を出すのだ」と、ペトロリアム・ヒート・アンド・パワー社のウィリアム・C・マクターナハン社長は言う。「ガレージは長年、古いクランクケースオイルを精製して再利用しようと試みてきたが、うまくいかなかった。しかし最近になって、この古い自動車オイルの広い使い道が見つかった。このオイルを燃やす特殊な型のオイルバーナーが開発され、今では多くのガレージ経営者がそれで自分の施設を暖房している。こうして、かつての厄介物が利益を生む品に変わっているのだ」
解説
ゴダードのカリカック研究は正気を遺伝とみなしていた
この講演記事の現存部分は講演者の名前を失っており、「州立大学」という語だけを残している。ヘンリー・H・ゴダードは1922年からオハイオ州立大学の異常・臨床心理学科の教授を務めており、この手がかりと合う。ゴダードが講演者だったとすれば、記事が伝える見解は彼の名を広めた著作の主張と食い違う。ゴダードは1912年の著書『カリカック家』で、一人の先祖から分かれた二つの家系をたどり、知能と正気と道徳性は遺伝すると結論づけた。この本の「精神薄弱」という区分は、知的障害と学習障害と精神疾患をひとまとめに含んでいた。ゴダードはこの結論から優生学的な方策を導き、「精神薄弱者」が子をもうけないよう施設に隔離すべきだと勧めた。したがって、1926年に教師たちに向かって先祖が精神病院で死んでいても誰も心配はいらないと語った講演者は、この初期の研究の中心にある前提を退けていたことになる。
ゴダードは1920年代に遺伝説から後退し始めていた
ゴダードの研究方法は『カリカック家』の刊行後まもなく批判を受け、ゴダード自身も10年以内に批判者に同意して自らの結論を支持しなくなった。ゴダードは1920年代までに、初期の研究に多くの誤りがあったと考え、この本を時代遅れとみなすようになっていた。ゴダードは後半生を、教育の改善、子ども時代の環境要因の改革、よりよい子育ての普及にささげた。エンブリオ・プロジェクトの伝記は、ゴダードが自分の研究を疑い始めた時期を1920年代の終わりとしている。同じ伝記によれば、ゴダードは「精神薄弱者」が社会で暮らしていけるように見えると述べ、その危険性についての考えを改めた。二つの記述は転換の時期について少しずれており、1926年の講演がゴダードのものなら、それは転換の早い公の表れとなる。自分の身にきちんと気をつけていれば精神に異常をきたすことはないという講演の主張は、環境と本人の手当てを重んじるこの方向と一致する。ただし講演者は、もろい神経系が遺伝しうることは認めていた。
1926年当時、精神疾患の遺伝をめぐる争いは論壇と法廷で続いていた
この講演は、問題がまだ決着していない時期に教師たちに届いた。ジャーナリストのウォルター・リップマンは1922年に『カリカック家』の前提に公然と疑問を投げかけた。精神科医エイブラハム・マイヤーソンは、この記事と同じ1926年に著書『精神疾患の遺伝』を出し、ゴダードの研究を批判した。それでも遺伝を重んじる側は影響力を保っていた。バージニア州アマースト郡裁判所での証言は『カリカック家』を引用し、その裁判は1927年の連邦最高裁判決バック対ベル事件につながった。連邦最高裁はこの判決で、精神薄弱とされた女性の強制不妊手術を認めるバージニア州法を合憲と判断した。精神病院の収容者の子孫が受け継ぐのはもろい神経系だけだという講演の主張は、法的な結果を伴う進行中の論争に属しており、翌年に連邦最高裁は強制不妊手術を支持する判断を下した。
1926年の空中文字広告は、始まってまだ4年ほどの新しい媒体だった
記録に残る最初の空中文字広告は、1922年5月に英国エプソム競馬場のダービー上空で行われた。米国で最初の空中文字広告は、1922年11月28日にニューヨークのタイムズスクエア上空で行われた。タバコのラッキーストライクを作る会社は、空中文字の最初の大手企業スポンサーになった。空中文字は重要な商業広告媒体になるまでに時間がかかったが、1920年代半ばには都市の住民が飛行機の音を聞いただけで窓に駆け寄るようになっていた。ニューヨーク・タイムズは1923年6月に、空中文字の広まりに苦言を呈する随筆を載せた。1926年には、空中文字の起源をめぐる投書が同じ新聞に寄せられていた。こうして1926年10月の時点で空中文字は、ニューヨークの石油会社社長が古いクランクケースオイルの使い道を語る中で、そのインクを例として持ち出せるほどなじみのあるものになっていた。
空中文字の煙は熱い排気に油を注入して作られ、その配合は秘密にされた
マクターナハン社長が語った、真っ赤に焼けた排気管に油を垂らして濃い白煙を出すという方法は、初期の空中文字機の仕組みと一致する。シリル・ターナーは大戦期のS.E.5a戦闘機を空中文字用に改造し、煙用の油のタンクとバルブを取り付けて、その液を排気に注入できるようにした。現在の空中文字も同じ原理を使っており、熱い排気マニホールドに注入された油が気化して大量の濃い白煙になる。空中文字の業者は、煙の正確な配合を秘密にしていた。1930年代後半には米国の業界をスカイライティング・コーポレーション・オブ・アメリカが率いており、ニューヨーカー誌はその方法を、ある化学物質を何らかの油に注入するもので材料の正確な中身は秘密だと書いた。空中文字の歴史記事は、1926年に廃クランクケースオイルが一般的なインクだったことを確認していない。この話はマクターナハン社長の発言だけに基づいており、社長は古いオイルを燃料として燃やす事業の宣伝の一部としてそれを語った。
原文
MOTHER RISKS LIFE TO SAVE BABE FROM FLAMES
Risking serious injury from the flames which were sweeping the interior of her dwelling, Mrs. Percy Sherritt, 58 Gunn street, this morning saved her baby girl, 2-months-old, from death as the inside of the Sherritt home was gutted by fire shortly after 11 o'clock. The baby was unharmed, but Mrs. Sherritt is now at the home of her husband's parents, suffering considerably from shock. The interior of the home, a one-story frame cottage, was badly damaged and most of the furniture destroyed. A defective chimney is blamed for the fire. Mrs. Sherritt lit a fire in the kitchen stove. After doing so she went into the yard to hang up some clothes which she had just washed. Turning around to go in the house she saw smoke issuing from the windows and doors. When she reached the house the walls were nearly all aflame. The baby was in a bedroom fast asleep. Acting impulsively Mrs. Sherritt, without regard for her own safety, rushed into the burning house and brought the baby out of the bedroom. A moment or so after the bed on which the baby had been sleeping took fire.
Insanity Is Not Hereditary, Teachers Are Told
[?] State University, advanced theories which must have come as a shock to many of his hearers, so contradictory were they to popular conceptions. Among other things he expressed the belief that children do not inherit their dispositions; that insanity is not inherited, and that nobody need worry if their whole ancestry were inmates of lunatic asylums and died there. All that the descendants of such people inherit, he claimed, is a nervous system which is liable to break under strain, but if the individual took proper care of himself there was no reason why he should ever go insane.
Skywriters Use Old Motor Oil
New York, Oct. 29. - " Airplane skywriters are using old automobile, crank-case oil for their ink, dribbling it into red-hot exhaust pipe to make a dense white smoke. " according to William C. McTarnahan, president of the Petroleum Heat and Power Company. " Garages have long tried to purify old crank-case oil for refuse, but without success. A general use for this old automobile oil, however, has been discovered recently. There has been developed a special type of oil burner which burns this oil and many garage owners are now heating their plants with it, thereby converting a former nuisance into a profitable article. "
紙面の出典:所蔵機関のデジタル資料